十勝農業ストーリー

次世代へ、酪農の未来を。メガファームの挑戦

北広牧場/若杉真吾さん

有限会社北広牧場は1996年、新得町内の4軒の農家が集まって設立された牧場です。設立当初から約400頭を飼育し、翌年には出荷乳量3,000トンを達成。200haもの畑で牧草やデントコーンといった牛の飼料も自家生産し、いわゆる「メガファーム」と呼ばれる大規模酪農を営んできました。



酪農の「その先」を見つめて。新たな挑戦が広がる場所

北広牧場が近年力を入れているのが、ヨーグルトやソフトクリームといった加工品の製造と、牧場を舞台にした観光や教育活動。生乳の生産だけでなく、六次化を見据えた取り組みを始めた経緯を、取締役の若杉真吾さんはこう話します。「きっかけは2016年に起きた台風でした。停電や断水で地域が大きな被害を受けたとき、自分たちは『食』を生み出す側なのに、困っている目の前の人にすぐに届けることができない実情に大きなジレンマを感じたんです。その経験が、以前から考えていた六次化に、実際に踏み出す後押しになりました」。

そしてもう一つ、「酪農の仕事は、生乳を安全にタンクに収めれば終わり。けれど、スタッフたちに、『その先』を見せてあげたいと思ったんです」とも語ります。加工品を直に消費者に届けることで、「ありがとう」の声を直接聞くことができるとともに、牧場体験で一般の方を受け入れることで外からの視点を知り、自分たちの仕事の尊さを再認識できる。牧場で働いているだけでは実感しにくかった消費者の存在をスタッフが認識することで、仕事のやりがいや面白さにつながればと、若杉さんは考えています。「僕自身が、酪農の仕事ってすごく面白いと思っているんですよ。だから、それをスタッフにも感じてもらいたいし、消費者にも知ってもらいたい」。

より観光面に力を入れようと現在進行中なのが、「北広牧場第2農場」のプロジェクト。使われなくなった町内の旧牧場を活用し、放牧地として整備しています。宿泊施設や飲食施設の開業や、作物の生産も予定しているのだそう。ゆくゆくはトラクターでのファームツアーや、生乳を使った加工品づくり体験などの構想もしています。「酪農の仕事の豊かさを伝えたい。もちろん大変なこともありますが、最高なんですよ。うちの子どもたちは毎日新鮮な牛乳を1リットル飲んでいますし、食卓には自家産の野菜や肉が並びます。『これが世の中のあたりまえじゃないんだぞ、って言い聞かせてます(笑)』。本当に豊かだなと感じます」。

第2農場の活用については会議の場を設け、地域の事業者と一緒になってアイデアを出し合って検討を重ねているそう。観光事業者やチーズ工房、飲食店などとタッグを組みながら、地域の大きな魅力としての「酪農」を打ち出していくため、これからも北広牧場の挑戦は続いていきます。

北広牧場
上川郡新得町字新得基線85-13
TEL:0156-64-3047
https://hokkoh-farm.co.jp/
  • 1,2 現在飼育しているのは仔牛も入れて約900頭。2014年からは和牛素牛の生産も開始。搾乳中の牛は450頭ほど。
    3 のむヨーグルトなど、可愛らしいデザインの加工品が人気。
    4 取締役の若杉真吾さん。妻の絵里子さんと共に北広牧場の運営を担っています。
    5 可愛らしいキッチンカーはソフトクリーム専用。主に町内のイベントに出店しています。

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