瑞々しい夏のビーツ、甘みが増す秋のビーツ
中村農場/中村良子さん
ビーツと聞いて、最初に思い浮かぶ料理は「ボルシチ」でしょう。ロシアの代表的な料理のひとつですが、それ以外の用途となると、「?」マークで頭がいっぱいになってしまうのは私だけでしょうか。でも、最近のビーツ事情はというと?それが、どうやら大きく様変わりしているようなのです。
ビーツ栽培を始めて19年
北海道、中でも十勝の気候風土がビーツ栽培に適していることに気づいたのは、帯広市の以平地区で農業を営む中村良子さんです。今から約19年以上も前、2006年のこと。下の子が保育所に入り、農作業に復帰してから「何か、張り合いのある仕事をしてみたい」と考えていた良子さんは、随分前に義姉が赤いビート(ビーツ)について教えてくれたことを思い出します。
ロシアで栽培されているということは、冷涼な気候の十勝地方にビーツは合うのでは?そう考えた良子さんは、ビーツの先進地であるヨーロッパに渡り、栽培に関する技術や知識を学んでくることにします。
それ以前、十勝地方で盛んに栽培されているビートの高い移植技術をビーツ栽培に応用できるかもしれないとも、良子さんは考えていました。そう、ビートとビーツは親戚関係にある野菜なのです。
いざ、中村農場のビーツ責任者として働き始めた良子さんですが、栽培するのが難しく、最初の頃は苦労の連続だったようです。やっとの思いで育てたビーツも、まだまだ知名度が低かった頃のことで、売り先を探すために奔走しなければなりませんでした。
35度近くまで気温が急上昇した夏の最中、中村農場を訪れると、良子さんはうだるような炎天下、ビーツ畑で草取りをしていました。「草は大敵。種を実らせる草は次の年に増えてしまうので」と、手を動かしながら教えてくれます。
良子さんがビーツ栽培に挑戦し始めた頃は、ちょうど子育ての時期と重なっていました。4人の小さな子どもたちの健康のこと、アトピーのことなどを考えると、なんとかしてこの健康によい食材を農薬を使わずに大量生産できるようにしたいと考え、小回りの利く除草機も導入しました。 以前よりは手取り除草の手間が随分減っているそうです。
栽培を始めて何年もの歳月が過ぎ、良子さんの栽培技術は見違えるまでに向上。気候変化に左右されにくいビーツが育つようになりました。「夏のビーツは瑞々しくて、加熱時間も短くて済むの」。冬に向かって寒さが増すにつれ、甘みが増してくるビーツは、季節ごとの特性を活かしながら、多くの料理に取り入れられるようになっています。
炒めたり、かき揚げにしたり、スープにしたりと、食卓を大いに賑わせてくれる野菜として、認知度もすっかり高まってきているようです。かき揚げのポイントは「切ったビーツに粉をまぶし、他の食材と和えると色移りが少ない」とのこと。また「最近では、手軽に栄養が摂れると、ビーツジュースも人気のようですよ」とも。
ポリフェノールの一種、ベタシアニンと共に、カルシウムやビタミン、ミネラル成分豊富な野菜、ビーツ。血管を柔らかくしてくれる働きもあり、血行促進にもいいそうです。
中村農場
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帯広市以平町西8線29番地
0155-64-5132
https://www.redbeet.jp/
1 干ばつと日照不足に負けず育った、立派なビーツ。
2 ビーツのきんぴら。鮮やかな赤いビーツは、見た目にもとても華やか。
3 手作業で草取り中の良子さん。
4 畑一面にビーツが広がる。
5 帯広の以平地区でビーツ作りに励む良子さん。ビーツ畑の前で。