いつだって「自分軸」で考えて動く
自然と共に暮らす、澤山家
株式会社SAWAYAMA FARM/澤山直樹さん、あずささん
澤山直樹さん、あずささんが家族と共に営む農場、株式会社SAWAYAMA FARM。目指すのは、「真に心地よい暮らし」です。この地で100年以上に渡り農業を営んできた澤山家は、5代目にあたる直樹さんの代で大胆なオーガニックへの転換を果たしました。総敷地38haもの広大な畑を、2011年から部分的にオーガニック化。その後も着実に範囲を拡大し、2027年にはすべての面積をオーガニックに切り替えるといいます。
畑の真ん中から生まれる「やさしい選択」
SAWAYAMA FARMの機械化された大規模なオーガニック農業と、一つひとつ手作業が主となる自然栽培の農業。メイン作物である小麦は、クローバーと混播し、「種蒔き後、収穫まで見守るだけの畑」を実現させています。年々収量も安定してきているため視察なども増えているそう。
当初オーガニックに取り組むようになったきっかけとしては、直樹さんやあずささんが農薬や化学肥料に対して不調をきたす体質だったことが挙げられますが、今となって2人が求めているのは、自分たちがやりたいこと、挑戦したいことをやって、楽しく心地よく生きていくこと。それはもちろん、農業という分野に限った話ではありません。
2025年に開設を予定しているのが、畑の真ん中にある、オフグリッドのドーム型複合施設。1階では、農場産の自然栽培やオーガニックの野菜を中心とした自然食の提供と、野菜や雑貨の販売を。2階は、衣類やアメニティなども含めて「地球と體(からだ)にやさしい」を提案する宿泊施設として。
そして地下には、自家採種で継いでいく固定種や在来種の種を保管するシードバンクを。十勝の食糧自給率が1,100%だという話はよく言われますが、その大元となる種の出所を顧みれば、大部分を輸入に頼っている現状が見えてきます。
「十勝型」と呼ばれる機械化された大規模な畑作農業のうち、部分的にでもオーガニックや種の自給に取り組む農家が増えたなら。それが十勝の農業を持続可能にしていくための選択肢の1つであると、澤山夫妻は考えています。
とはいえあずささんは「他人は変えらえないから、いつでも自分たちがどうありたいか、で行動しています」とのこと。オーガニックや自然栽培に取り組んでいると「苦労はなんですか?」と聞かれる機会も多いそうですが、「苦労なんてない! 農家であること、家族と一緒にいられることが幸せだし、全部好きでやっていることだから、毎日本当に楽しいです!」と、満面の笑顔。
自分たちが思う、真に心地よい暮らしとは何か。スピード感や便利さ、物質的に満たされた世界の裏側で、人間以外の生き物も含め、皺寄せを被ってはいないだろうか。農家として提供する食だけではなく、その周辺に密接に寄り添っている「暮らしそのもの」を考えることが、今のSAWAYAMA FARMにとっての大きな挑戦の1つになっています。
「自身の心と體(からだ)にやさしい選択をすることは、地球環境にもやさしい選択となること。その具体的な選択肢を提言します。」
これは、建設予定のドーム型複合施設の事業計画書に、あずささんが書き入れた文言。この施設は、環境保全型農業を実践的に学べる育成スクールや、参加者が互いに学び合うコミュニティ形成など、これまでに澤山夫妻が取り組んできたことをハード面から支える拠点として大きな力を発揮するでしょう。SAWAYAMA FARMの「提言」が詰まったその場所を訪ねる日が楽しみでなりません。
株式会社SAWAYAMA FARM
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上川郡清水町字御影南4線70番地
https://www.instagram.com/sawayama_farm/
1 冬のSAWAYAMA FARM。ピリッと冷えた空気の中、日高山脈が一層くっきりと美しく見えます。
2 クローバーと混播しているオーガニック小麦畑。
3 澤山夫妻の自宅の裏手に広がっている畑。ここにドーム型複合施設が建設される予定。
4 澤山さん一家。
5 あずささんが自然栽培を手がける畑では、50品目ほどの野菜やハーブが育ちます。