十勝農業ストーリー

変わらぬ愛情を注いで、八巻さんと歩むバナナ牛

やまき牧場/八巻春美さん

太平洋の海原を南に控えた大樹町。ここで、「バナナ牛」というユニークな牛肉を生産しているのは、八巻春美さん、昌子さん夫妻が営む大樹町のやまき牧場。なぜ「バナナ牛」と呼ばれているかというと、おやつにバナナを与えているから。そのおいしさは、地元の人たちを中心に口コミで広がっていきました。



海沿いの町大樹町で、バナナを食べて育つ健やかな牛

バナナ牛を育てているのは、大樹町の八巻春美さんと昌子さん夫妻。バナナ牛の名前の由来は、牛たちにおやつとしてバナナを与えていることです。それはひとえに、「健康な牛を育てたい」という思いがあってのこと。あるとき、「バナナには自己免疫を高める働きがあり、病気に対する抵抗力を高めてくれる」という医学記事を目にした2人。育てていた牛たちに試しにバナナを与えてみると、喜んで食べたのです。

それ以来、仔牛の頃からバナナを与えて、その味を覚えさせていきました。すると、ほとんどの牛たちが喜んでバナナを食べるようになったのです。それ以来、昌子さんが皮をむいたたくさんのバナナを入れたバケツを持って牛舎に近づくと、牛たちは自然と近寄って来るのだとか。そうして毎日バナナを与えながら牛たちの様子を見てきた八巻さん。牛たちが風邪をひいたり下痢をしたりということも、少なくなったのだそうです。

現在、肥育しているのは30頭。夫婦2人で世話をするのにちょうど良い頭数だと言います。自分たちで育てた牧草を与えて、おやつにバナナを食べさせる。その飼養方法は昔から変わっていません。でも地域との関わりは広がりました。八巻さんが家畜市場に行くときには、近隣の牧場の牛を一緒に乗せていったり、バナナが入荷したら連絡をくれる青果店があったり。最近では直売所の隣の小屋で、小さなイベントも開催されるようになりました。

もちろん、家族の支えも大きいです。春美さんが膝の治療で2~3ヵ月ほど入院したことがありました。妻の昌子さんだけでなく、普段は会社勤めの息子さんや娘さんたちも休日のたびに手伝いに来てくれ、春美さんと連絡を取り合いながら、なんとか大変な時期を乗り越えました。退院後は以前と変わらず働いている春美さん。家族の支えに感謝しながらも「元気なうちは続けるつもり」と話してくれました。

取材後、丸々と大きくなった出荷前の牛たちを見せてもらいました。牛たちは最初、険しい目つきでしたが、八巻さん夫妻を確認すると、柔らかい表情に。信頼してなつく牛を見て、バナナ牛の魅力を再認識したのでした。

やまき牧場
広尾郡大樹町日方94
01558-6-3973
  • 1 仔牛にはジューサーにかけたバナナをミルクと混ぜて。大きくなった牛には皮をむいたバナナを直接与えている。
    2 八巻晴美さん、昌子さん夫婦が切り盛りしている。
    3 育てているのは、和牛を父親に、ホルスタインを母にもつ十勝産のF1(エフワン。交雑種のこと)
    4 牛肉の深い深いうま味が広がる、バナナ牛の加工品。

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