十勝農業ストーリー

焦げ茶色に光る自家種のいなきび

山崎農場/山崎康幸さん

澄んだ空気がとってもおいしくて、それは気持ちのいい秋晴れのある日。山崎農場の山崎康幸さんは広い畑で大きなコンバインを操り、いなきびを収穫します。コンバインの向こうには晴れ渡った青い空と深いブルーの山の姿。気持ちのいい日射しとおいしい空気。畑で過ごす時間は、いつもこうしてかけがえのない贈り物をくれるのです。



大好きだからこそ作り続けたい

「ザザザザーッ」と耳に優しいさざ波のような音。ツヤツヤと焦げ茶色に光るいなきびの小さな粒が、トラックから川の流れのような滑らかさでシートの上に移されていきます。

音更町で農業を営む山﨑農場では、3代にわたって「いなきび」を作ってきました。農場主の山崎康幸さんは「いなきびご飯が大好き」と誇らしげに語ります。

いなきびを作る農家が減ってもなお、毎年頑なに種を蒔き続ける山崎さん。「近所に作っている人がいれば、何かわからないことが出てきたときに聞くこともできるんだけど」。いなきび作りはほとんどが自己流。草が生い茂ってしまったり、鳥たちが畑にやってきて食べてしまったりと苦労は絶えません。それでも作り続けるのは、幼い頃から食べている大好きないなきびを「自分が食べたいから」なのだとか。

代々守り続けてきた自家種を5月に蒔くと、7月頃から青々と茂った穂は次々と実をつけていきます。9月に入るとコンバインを使っての収穫がスタート。収穫時点では粒が未熟なものもあるため、そのまま3ヵ月から半年ほど置くとのこと。「水分調整をして、質を均一に保つため」とは、3代目の康幸さんです。出荷時には皮を剥いたいなきびを1粒ごと丁寧に選っての袋詰めという手作業が待っています。

こだわりは、収穫したいなきびの皮を 一度に剥いてしまわないこと。「空気にさらす時間を少なくしたくて、商品の作り置きはしないんです。全部剥いちゃったら時間経過と共に白くなってしまうし、風味が抜けてしまう。だから出荷する間際に皮を剥いてます」。

濃いクリーム色の小さな粒を見ながら愛おしそうに語る山崎さん。山崎家のいなきびご飯は「白米を引いた分だけいなきびを足す」というもの。「難しく考えることは無いんですよ。ちょっと硬いかな? と思ったら次は水を少し多くしてみるといい」。毎日の食卓で、十勝産のいなきびを手軽にたのしめるのはうれしいことです。

山崎農場
音更町西中音更北15線4
  • 1 収穫時期になり豊かに実るいなきび畑。
    2 背丈よりも高く育ったものを鎌で刈り取っていく。
    3.4 いなきびを炊き込んだご飯。いなきびは開拓時代、多くの農家が作っていた雑穀のひとつ。
    5 山崎農場3代目の山崎康幸さん。音更町の高台に広がる畑でいなきび以外にも、ビートやジャガイモ、小麦、ニンジンなどを作っている。

ページトップ