十勝農業ストーリー

十勝の気候と健康な土が育んだ 甘酸っぱいベリー
金田ベリー園のジャム

金田ベリー園/金田周一さん

有機肥料を入れ、低農薬で育てるから甘みの強いベリーに

昭和50年代、米農家だった金田周一さんは、国の減反政策の波を 受け、水田だった土地にベリーの苗を植え始めます。「最初は豆を作ろうとしたけど、しけっちゃってダメだった。水田の次に野菜をやって、そのうちハスカップを植えるようになって…」。ベリーを植え始めた当時のことを金田さんはそう振り返ります。

郵便配達の仕事を請け負いながら、農業を続けてきた金田さんでしたが、米の次にどんな作物を作るかは何にもまさる大きな関心事。あるとき金田さんは知り合いから「ハスカップ」のことを耳にします。そのときは「ハスカップ」が何かも知らず、上の空で聞いていた金田さん。ハスカップという名前を覚えるために、紙に何度も書いて覚えたほど、それは金田さんにとっては未知の作物でした。しかし、金田さんは千歳と美唄でハスカップを専門に栽培している人がいると聞き、訪れてみることにしたのです。実際に自分の目で見て、話しを聞きたい。その結果、「手間はかかりそうだけど、いけるかもしれない」という結論を得るのです。栽培方法に思いを巡らせ、売上とコストを計算し、最終的に決意を固めた金田さんは、何と1度に1000本ものハスカップの苗木を買って、自分の土地に植えることにしました。「家族には反対された」。しかし、「途中でやめられなくなるようにと考え」、思いきって大量の苗を買い付けたというのです。退路を断つ心意気です。

苗が育ち、実を付けるまでにかかる期間は4〜5年。金田さんはその年月を準備期間と考え、ベリー栽培に完全に移行すると同時に収穫できるようにと体制を整えていました。そして、最初から「(口にした人から)美味しいと言われるように、化学肥料や除草剤は使わないで作ろう」と考え、実行に移してきたのです。「有機栽培をしていると草がモサモサはえてくる。雨が降り晴れるとまたはえる。草との戦いだ」。金田さんは春から夏のベリー園の様子をこんな風に話してくれました。(草取りの手間をかけず)除草剤を使って、ラクして栽培したいと思えばやれるが、そうはしたくないと願う金田さんがいたのです。

  • 1 トロリと濃厚な金田ベリー園のカシスジャム。甘酸っぱくてフレッシュな味わい。4種類あるベリーのジャムはどれも945円。それぞれ食品添加物不使用。黒カシスに含まれているアントシニアンの量はブルーベリーの20倍にも。
    2 ハスカップにはカイガラムシが付きやすいそうです。カイガラムシは寒い時期に付くため、防除するには雪が降ってから1〜2回、石灰ヨウゴウ剤をかけてやるそうです。寒さの厳しい季節は木も葉っぱも休眠中の時期にあたるので、この薬をかけても大きな影響は出ないとのこと。他に病虫害が起きた場合、金田さんのところでは木酢液をかけるようにしています。
    3 ハスカップジャム、カシスジャム、赤カシスジャム、グズベリージャム。
    4 金田周一さん。長年、美味しいベリーを作る努力を続けてきた金田さんにとって、それ以上の課題は売り先の確保だったそうです。

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