十勝農業ストーリー

ゆっくりとした歩みが生み出す本物の味
共働学舎新得農場のチーズ

農事組合法人 共働学舎新得農場/宮嶋 望さん

効率は追求できない、だからこそ出来ること

「学舎のメンバーの大半は身体や心に負担を抱えている、ゆっくりとした連中なんですよ」。共働学舎新得農場の宮嶋望代表は言います。この「ゆっくりとした」という言い回しには、共働学舎のありようが凝縮されています。

宮嶋さんとメンバーが十勝の新得町の山の麓に住みついたのは昭和 53年のこと。牛舎や住宅はおろか、水道や電気さえない環境でした。工事現場からプレハブなどをもらい、自力で建物を建てるところからスタートしたと言います。

人数も、当初は宮嶋さんの家族を入れて6名ほど。ところが、4年後には、あっという間に牛の数より人が多いという状況になりました。様々な悩みを抱えて多くの人間が学舎に集まってきたのです。牛乳を出荷するだけでは生活が成り立たず、宮嶋さんは付加価値を加えたものを売っていこうと考えました。

しかし、「ゆっくりとした」メンバーでは短いスパンで流行が変わるような商品には手が出せません。宮嶋さんが思いついたのはハードチーズを作る、ということでした。磨いて寝かせる期間が長期間必要なハード系のチーズは、すぐにお金に換えることが出来ないため、一般的には非常にリスクの高いシロモノです。しかし、リスクにつながるその時間こそが学舎のメンバーには必要である、本物の味を追求すればリスクは越えられるはず、宮嶋さんはそう考えたのです。

しかし、どうしたら本物のチーズなどというものが作れるのか。
その難問に答えをくれたのはフランスAOCチーズ協会会長のジャン・ユベール氏でした。ユベール氏とは、農業の視察で訪れたフランスで出会ったそうです。宮嶋さ効率は追求できない、だからこそ出来ることんは本物のチーズ作りがしたい、という思いをユベール氏に伝え、学舎のメンバーについても語りました。

  • 1 熟成庫の中でじっくり寝かされるチーズ。
    2 牛乳を固めたものをチーズクロスに包んで型へ入れる作業。徐々にチーズらしい姿へ成型されていきます。
    3 熟成庫の通路。木製の大きな扉の向こうでチーズが眠っています。石造りの建物内は、実に清々しい空気!
    4 明るさとパワーに満ち溢れた共働学舎新得農場代表の宮嶋望さん。

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