十勝農業ストーリー

ゆっくりとした歩みが生み出す本物の味
共働学舎新得農場のチーズ

農事組合法人 共働学舎新得農場/宮嶋 望さん

プロでもない人間がチーズを作るのか、と一喝されるのではないかと思いましたが、ユベール氏は言いました。「では、教えに行ってやろう」。

予想外の答えに宮嶋さんはとても驚きました。しかも、ユベール氏は実際に共働学舎を訪れ、本物のチーズを作る条件を教えてくれたのです。その教えとは「牛乳を運ぶな」。

ユベール氏の言葉は、自分の牧場で搾った牛乳のみを使うこと、機械で運ぶ工程は出来るだけ少なくすること、というメッセージでした。

宮嶋さんは早速、乳を運ばなくて済むような牛舎、搾乳室、チー ズ工房を新しく建築しました。衛生管理上50 メートル離すことが通例である搾乳室とチーズ工房を23メートルに短縮し、チーズ工房の床を下げてパイプでつなげ、高低 差で牛乳が流れていくよう工夫しました。ユベール氏の教え通り、牛乳を機械で運ばなくて済むようなシステムを作り上げたのです。
結果、生きた牛乳を傷めないので、その発酵作用で雑菌を抑えたチーズ作りが出来るようになりました。

悪臭や汚水処理の問題は、炭と微生物を活用して解決。後に再び共働学舎を訪れたユベール氏は「お前のところの牛舎は何故臭わないんだ」と驚き、宮嶋さんは内心ニヤリと微笑んだそうです。

自然の懐で急がずあせらず、それぞれが出来る力を注いで行われるチーズ作り。そんな風にして作られた共働学舎のチーズは、平成16年世界的なコンクールで金賞を受賞しました。その後も、様々なコンクールで賞を獲得し続けてい ます。

機械や効率を廃したところから生まれてくる本物がある、共働学舎の姿を見ているとそんな風に考えさせられるのです。

農業組合法人 共働学舎新得農場
上川郡新得町字新得9-1
TEL. 0155-69-5600
http://www.kyodogakusha.org
  • 5 放牧され、のんびりと牧草を食んで過ごす牛たち。積雪のある冬は、敷居のない牛舎内でのびのび暮らします。
    6 共働学舎交流センターミンタルには、チーズが購入できる売店があります。チーズ料理が楽しめる飲食スペースもおすすめ。
    7 世界的なコンクール「山のチーズオリンピック」で金メダルを2度受賞した「さくら」。
    8 熊笹を巻いて北海道らしさを表現した「笹ゆき」。

1

2

ページトップ