一度食べたらクセになる
西上経営組合のきりぼし大根と蕎麦
農事組合法人 西上経営組合/奥村一馬 さん
素材に正直な切干大根。
大根はエラい
鹿追町の市街地から車で10分。なだらかな丘が連なり、四季を通じて美しい景色の広がる高台に西上経営組合(以下、組合)はあります。8戸の農家が「顔の見える農業経営」の価値観のもと集まり、農作物を生産しながら、こだわりの加工品を作り、販売まで手がけてきました。
組合の看板商品は「蕎麦」。蕎麦畑のある上幌内地区は昼と夜の寒暖差が大きく、美味しい蕎麦を育てるのに適した土地柄です。生産している蕎麦は「ぼたん」という品種。生産効率が良くないため、この品種を生産している農家は北海道内でもそう多くはありません。
しかし、ぼたん蕎麦には強い風味があり、組合ではその生産性の低さを差し引いても、作る価値のある蕎麦として、栽培を続けてきたのです。今では本州の高級そば店からの注文が引きも切らないほどです。
収穫した蕎麦は敷地内にある加工施設で石臼を使ってゆっくりと自家製粉。風味を損なわないよう、石臼になるべく熱を加えない挽き方をしたり、引き貯めをしない受注製粉であったりと、製粉の仕方にもこだわります。また敷地内には蕎麦を加工した「そば粉」や「打ち粉」などを販売する直売所があり、立ち寄って買うこともできます。
さて、今回紹介したいのは、組合の代名詞とも言える蕎麦の陰に隠れながらも、今から15年ほど前から生産を始め、着実にファンの心をつかみ続けているロングセラー商品。その名も「きりぼし大根はえらい」です。切干大根は家庭の食卓ではあまり目立たない、どちらかというと控え目なキャラクターです。注目される機会が少ないために、今まで切干大根の違いについて考えたことがなかったという人もいるかもしれません。
ところが、組合の作る切干大根には大量生産方式では決して作り出せない、アナログだからこそ生まれる深い味わいがあるのです。
まずこの切干大根1袋(100グラム)には、何と大根が約2本分も入っています。薄く切ればその分ボリュームが増えるし、乾燥時間も短くて済むところを、あえて肉厚にカット。厚みがある分、噛むほどに素材の自然な風味と甘さが引き出され、水に戻さなくてもおやつ代わりにポリポリ食べてしまえるほどの味わいです。
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1 西上経営組合のきりぼし大根。
2,3 生産量の少なさから幻のそばとも言われる「ぼたん蕎麦」。甘味と風味の良さには定評があります。
4 きりぼし大根「大根はえらい」。
5 一つひとつの商品について作業現場の話から丁寧に説明してくれる奥村一馬さん。 奥村さんは営業と農作業、二足の草鞋(わらじ)を履く。
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