十勝農業ストーリー

一切加熱をしていない 「生乳」を飲むことができるところ

有限会社 想いやりファーム/長谷川竹彦さん

想いやりファームでは、全国でも珍しい取り組みをしています。
でもそれは、奇をてらったものではなくて、想いやりファームのスタッフが次の世代に心から残したいものを仕事として行なっているだけなのです。



その人がどのように生きてきたのかが全て出てしまうのが農業。
子育てとおなじです

中札内村にある想いやりファーム。ここでは28ヘクタールの牧草地に、親子合わせて45頭の牛がスタッフと共に暮らしています。ここでは生乳を飲むことができます。牛乳ではなく生乳です。牛乳と生乳。何となく同じもののようにも感じてしまいますが、日本の法律上では全く違うものなのです。簡単に言うと生乳は乳牛から搾った乳のことを言い、牛乳は生乳を原料にして加工したものを言うのです。そして、日本で生乳を販売しているのは、唯一想いやりファームだけなのです。

「生乳が世界の市場で出回らなくなって100年ぐらいになります。生の乳で現代の安全基準を満たすことは不可能なんです」と話すのは、代表の長谷川竹彦さん。長谷川さんは神戸の出身。小さなころから自然な状態で動物と関わり合うことを考えてきたと言います。

日本には多くの酪農家がいるのに、どうして生乳を販売している人がいないのか。
「経済性や効率を優先して考えるととてもできません。そのことを考えると、むしろ損なことばかり…」。想いやりファームの生乳は書いて字のごとく、牛の生の乳。加熱殺菌はしていません。それは、殺菌をする必要がないほど、生乳中に含まれる細菌がいないということ。しかし、その生乳の品質を保つための管理には、途方もない労力がかかっているのです。

「全てにおいて半端なことはできない。完璧なものでなければうちは製品にはしません。機械を組み立てるのに1時間。充填するのに1時間。そして機械を使った後の分解洗浄に6時間。工場内のATP(生体反応)の値も、通常1000以下でいいと言われているんですが、うちは2です。製品のチェック検査もかなり厳しくやっていますし、生の乳を流通させるのに、どんな企業にも負けないことをやっています」。
とことん研究し、安全な牛の乳をお客様に提供しようと考える長谷川さん。「生乳を商品として流通させるには、それほどまでに衛生管理を徹底しなければ出荷することはできないし、何より牛たちが本当に健康で幸福でなければなりません。おっぱいには母親の状態が全て出ますから」。経済効率だけを優先する考え方だけでは、到底割り切れない思いが1本のビンには詰め込まれています。

  • 1 想いやり牛乳。
    2 「生乳を販売するなんて常識ではありえない。国から認可が下りるまで3年かかりました」と長谷川さん。
    3 牧場内カフェスペースで食べられるソフトクリーム。
    4 長谷川竹彦さん
    昭和29年神戸生まれ。昭和63年に中札内村に移住。平成3年中札内村離農跡に新規就農。平成12年中札内村レディースファームを設立。現在、経営の傍ら全国各地で講演なども行っています。

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