十勝農業ストーリー

十勝の小麦畑と食卓、 そして人を繋ぐ

前田農産食品 合資会社/前田茂雄さん

小麦畑から見えてくるもの

そんな折、帯広市でフードバレー推進の担当をしていた都鳥真之さんが「十勝産の小麦でピザを焼きたい。小麦を使わせてください」と前田さんを訪ねてきました。都鳥さんは「北海道の農産物の良さはなんとなく知っていましたが、肌で感じることがほぼない状況だったので、間近に小麦畑を見るチャンスを作りたいのです」と、平成21年に十勝産小麦を普及させること、それから十勝のパン屋のレベルアップのためのイベント「ベーカリーキャンプ」を前田さんの畑で開催することになります。さらに、平成22年には、十勝管内のパン屋さんが中心になって、小麦畑でパンをつくる親子パン教室も開催。多くの参加者が、初めて見る小麦畑で楽しそうにしているのを見て、前田さんは「小麦畑と食卓をつなぐ ことの大切さ」を一層強く感じたと言います。

小麦畑があって、製粉工場があって、パンを一緒に作ってゆけるパン屋さんが多く存在する十勝。それらを繋ぐことができる環境にいる生産者は、とても恵まれているのかもしれません。

「例えば、ごはんを炊くようにパンを自分で焼く人はそれほど多くないと思うから、将来的には、お店で手に取って買えるパンやパスタ、うどんなど麺類の加工、あとレストランもやってみたい。品種の特徴、おすすめの食べ方がわかっていれば、消費者にとってはわかりやすいと思うからね。小麦という素材作りから家庭の食卓で食べられるものを作るところまで一貫して携わることで、需要もわかるし、もしかしたら雇用を創り出して行くことも可能かもしれない」。駄目もとでもやってみたい!と前田さんは目を輝かせます。前田農産では、地元のJA本別青年部と協力して、子ども農業体験など農業を知ってもらうきっかけを作る取り組みもしています。

パン職人が「前田さんの作る小麦は甘いんだよね」と言ってくれたとき、地域の子どもたちが農業体験などで楽しそうにしているのを見ているとき、いい仕事についたなと思う前田さんがいます。

そしてなにより、曾祖父が原生林の木を1本1本切り倒し、株を掘り起こし、石を除いて耕して100年以上経つこの土地で農家を続けていられることが本当にありがたく、自分たちが新しいことに挑戦できるのは、その土台を作ってくれたおかげなのだという感謝を、前田さんは忘れません。

前田農産食品 合資会社
中川郡本別町弥生町27-1
TEL.0156-22-8680
http://www.co-mugi.jp/
  • 9 小麦ロールが並ぶ。
    10 前田農産のスタッフのみなさん。(写真提供:前田農産)

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