十勝農業ストーリー

土に向き合うことで中藪さんが手にしたもの

有限会社 中藪農園/中藪俊彦さん

土の異変に気づいてからというもの、10数年かけて本格的な土壌改良に取り組んできたのは畑作農家の中藪俊秀さん。
今では健康を取り戻した畑の土は黒々と輝やきながら、美味しい野菜を育んでくれるようになりました。



土壌改良に傾けた情熱を売り先開拓にも注いで

十勝地方、帯広市の南端、清川町で畑作農家を営む中藪俊秀さんは本州のスーパーや小売店などの間で、美味しい馬鈴しょや豆を作る農家として知られています。中藪さんが作っている馬鈴しょは十勝こがね、はるか、さやかなど、ちょっと聞き慣れない品種のものばかり試作分も含めると9種類。それらは中藪さんの作る小豆はかぼちゃなどと共に、年々、評判を呼んでいるのです。

10年前までの中藪農園はと言えば、馬鈴しょの原採種農家でした。十勝の多くの畑作農家が作っている馬鈴しょの品種、男爵やメーイクインなどの種子馬鈴しょを長年、一般農家のために育ててきたのだそうです。
原採種農家と言えば、馬鈴しょ農家としてはステイタス的な存在。ところが、ある出来事をきっかけに、それらを振り切るように中藪さんは独自の道を歩み始めていたのです。

10年以上前、中藪さんは自分の畑の土の色が白っぽく変化してきていることに気づきます。健康な土は黒っぽい色をしていると言いますが、これは明らかに異変でした。土本来の健康を失いつつあるのではないだろうか。中藪さんは長期間使用してきた化学肥料や除草剤が影響しているのではないかと考えます。湧き上がってくる多くの疑問を解消しようと文献などで勉強を始めていた中藪さんは、不思議なことに土壌や肥料の専門家と次々に出会う機会を得ることになります。土の化学性、物理性、生物性…。畑まで専門家に足を運んでもらっては、直接指導を仰ぎ、情報を得ていくようになっていく中藪さん。土壌診断もしてもらいながら、土に改良を加えていきます。こうして少しずつ、中藪さんの畑では土の健康を取り戻すための取り組みが始まっていました。

  • 1 ジャガイモ畑。
    2,3 収穫したジャガイモやカボチャは選別後、大きさごとに箱詰めされ、大きな低温倉庫の中で出荷を待ちます。品質にこだわる中藪さんにとって、自前の低温倉庫はなくてはならないものです。
    4 中藪俊彦さん 「必要な情報にはお金を払わないと身にならない」。土壌改良をするのに必要な情報にお金をかけてきた中藪さんは10数年の歩みを振り返りつつ、シビアな口調でこう語ります。

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