「食べる人のことを思ってつくる」
気持ちさえあれば、方法は無限にある
株式会社オークリーフ牧場/柏葉晴良さん
大切なのは、変化し続けること。変化を恐れないこと。
オークリーフ牧場が始めた「未来日記」プロジェクト。
10年の歳月が経ち、今、その活動は少しずつ消費者と繋がり始めています。
働くことの意味と価値を見つめ直す
牛の育成販売、養鶏、果樹の生産販売などを手掛けるオークリーフ牧場。「消費者に向き合う」。信念ともいうべき言葉が、代表である柏葉さんや従業員から幾度も語られます。繰り返される言葉は、かつて利益と効率を一心に追い求めていた過去の自分達への戒めのようでもありました。
岡山県から入植し畑作酪農を営んできた家で育った柏葉さん。幼い頃から、畑作と酪農を手伝いながら仕事に家事にと忙しく働く母の姿を目の当たりにしてきました。
少しでも仕事の負担を軽くするべく、昭和48年に酪農から肉牛の飼養へとシフト。しかしそれから8年後、父親が突然亡くなり想像もしなかった債務が柏葉さんに重くのしかかることになります。一時は「芽室一の借金王」とまで呼ばれ、足下を見られて騙されそうになったこともあったと言います。「20代で良いことも悪いことも全て経験したね。でも、あの歳だったから良かったんだと思う」。今ではそう振り返ることができるようになりました。
人生の中で経験した全てのことが自分の糧となるのなら、良くも悪くも「お金を稼ぐ」ということにただひたすらにがむしゃらだったこの時期に、20代を過ごせたことは幸せだったと言えるのかもしれません。
なぜなら、その経験こそが、お金の大切さと同時にその虚しさをもまた深く知ることになり、真に価値のあるものは何なのか、ということを考える力に繋がっていったのだから。
コストパフォーマンスや仕事の効率性、数字ばかりを追い求めていた当時の柏葉さんに一石を投じたのは、「消費者の声」でした。経営が落ち付いてきた平成5年、敷地内にログハウスを建てファームインを始めることに。宿泊体験をしてもらい、少しのんびりしてもらえればいいかな、との思いで始めたファームインでしたが、思いもかけずそこで接した様々な人々の言葉が次々に心に飛び込んできたのでした。「ここの環境は本当に素晴らしい」と口々に発せられる賛美の声。
そうして、ふと気づいた自然の何と雄大だったことか。幾重にも連なる丘の風景、日高山脈に沈む夕日の美しさ。そんな風に自分が住む土地のことを意識することはなかった柏葉さんでしたが、第三者から言われて始めて胸にストンと落ちるものがあったのです。恵まれた自然環境の中で、命を作る食べ物を自分たちで育てていくことが出来る。そのことに感謝し、ただ「作る」だけでなく、自分が消費者の立場に立って考えた時に、自信を持って「安全・安心」であると言える食べものづくりがしたい。それこそが自分たちが作りだすべき真の価値なのだと、そう確信した瞬間でした。
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1 オークリーフファーム全景。
2 えさには、抗生物質無添加、Non-GMO(非遺伝子組換え)、Non-Postharvest(収穫後農薬未使用)の原料を使用。食品残渣物も積極的に利用しています。
3 抗生物質無添加のえさを使用しているため、病気など牛の体調管理には気を遣います。特にほ乳期の牛たちに使用するものは丁寧に消毒殺菌を行います。
4 牛舎から搬出した敷料はリサイクル。何度かリサイクルした敷料は、良質な堆肥として近隣の農家で利用されています。
5 柏葉晴良さん
「誰かが切り拓いていかなきゃならないのなら、俺がやる」。力強い組織にはルールよりも理念の浸透が大切であると語る。