青空の下でのびのびと、悔いのない経営を
有限会社 十勝しんむら牧場/新村浩隆さん
人生は一回だけ。
だったら思いっきりやりたいことをやったほうがいい。
それにやりたいことはたくさんあっても、実際にできるのはほんの少しだけだから。
開口一番、新村浩隆さんにそのパワフルなエネルギーの源を訊ねると、返ってきたのがこの言葉。
誰もが心の奥底で感じていることをシンプルな言葉で話すことができる人、
きっと、それが新村さんなんだろう。
自分が責任を取らない仕事に、やりがいは生まれない
新村さんは農家の4代目で十勝しんむら牧場の代表。富山県から入植してきた曽祖父が開拓した土地を受け継いで酪農業を営むと同時に、ミルクジャムなどの加工品製造、そして平成17年からはカフェ「クリームテラス」の経営に携わるなど、活動は多方面に及んでいます。また、これまでに草づくりコンクールでの北海道知事賞受賞をはじめ、農業経営や加工品など多くの分野で功績を上げてきています。
そんな輝かしい経歴とは裏腹に、酪農を営む家に生まれ育った新村さんには、小さな頃から家業に対して「かっこ悪さ」や「汚さ」、「休みがない」などのネガティブなイメージがありました。できれば酪農の仕事はやりたくないと思っていたそうです。転機が訪れたのは大学時代。「自分の人生を考え、自分のやりたい仕事は何だろうかと考えました」。長い目で見ると、流行に左右される仕事は5年、10年先もあるかどうか分からない。一生やり続けられる仕事は何だろうか。そう考えた時に辿り着いたのが食の世界。「食の産業は必ず残る、そう思ったんです」。
そこで思うだけならば、誰にでもできること。新村さんが他の人と異なるところは、そこから具体的な行動に移すために思考をさらに深めながら、その一方で自分に与えられた環境を冷静に分析し、的確な状況判断をしていったこと。新村さんは、その時に真剣に家業である酪農を見つめ直し、どうすれば自分のやりたい仕事ができるように経営を軌道修正することができるのか、とことん考えました。
そうして、辿り着いたのが「社会情勢に左右されない経営をする」ということでした。現在はグローバル化が進み、たとえ地球の裏側で起こったことでも、その余波を避けるのはむずかしい状況にあります。コスト負担の大きな牛の餌代や燃料代はその影響を直接受けてしまうのです。ところが酪農家に生乳の価格決定権はありません。
後に新村さんが搾乳するだけの経営から加工に手を広げるきっかけとなったのは、そんなグローバル化の流れに対応するため。加工も自分たちの手でやらなければ、この先きっと立ち行かなくなるだろうという危機感が背景にあったのです。
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1 放牧牧場。
2 牧場の敷地内にあるカフェ「クリームテラス」。
3 ミルクジャム。
4 新村浩隆さん
昭和46年生まれ。平成6年より放牧開始。平成10年草づくりコンクール北海道知事賞、天皇杯日本農林漁業振興会会長賞受賞。平成12年ミルクジャム発売。平成17年カフェ「クリームテラス」開店。平成18年「コープさっぽろ農業賞」北海道知事賞・大賞、「HAL農業賞」経営部門優秀賞。平成20年農商工連携88選選出。平成21年牛乳・乳製品独創性コンテストオリジナル・アレンジ賞受賞。